パケットキャプチャとは
ネットワーク上を流れるデータ (パケット) を収集し、その内容を記録・解析する技術のことです。
ネットワークを流れるデータは、小さな単位に分割されて送受信されます。この小さなデータの単位を「パケット」と呼びます。パケットには、送信元・宛先の情報、データの種類、データ本体など、通信に必要な情報が含まれています。パケットキャプチャ装置は、ネットワークを流れるパケットを傍受し、その内容を記録します。記録されたパケットは、専用のソフトウェアで解析することで、通信の内容や問題点を把握することができます。
パケットキャプチャの主な用途
- ネットワークのトラブルシューティング:通信速度の低下 (遅い) や接続不良 (繋がらない) などの原因を特定するために、パケットの流れを解析します。
- セキュリティ対策:不正アクセスやマルウェアの侵入などを検知するために、不審な通信を監視します。また、情報漏洩などの不正行為の証跡として使用されます。
- アプリケーションのデバッグ:アプリケーションの通信内容を解析し、不具合の原因を特定します。
- ネットワークのパフォーマンス分析:ネットワークのトラフィック量や遅延時間などを測定し、パフォーマンス改善に役立てます。
- ネットワークの学習:ネットワークの仕組みを理解するために、実際の通信データを観察します。
パケットキャプチャの注意点
パケットキャプチャは、ネットワークのトラブルシューティングやセキュリティ分析に非常に役立つツールですが、使用する際にはいくつかの重要な注意点があります。
- プライバシーと法的規制
パケットキャプチャは通信内容を詳細に記録するため、個人情報や機密情報が含まれる可能性があります。特に、パスワード、クレジットカード情報、個人を特定できる情報などの取り扱いには細心の注意が必要です。
- セキュリティリスク
キャプチャしたデータは機密情報を含むため、適切に保護する必要があります。不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、アクセス制御や暗号化などの対策を講じることが重要です。
- 正確な時刻同期が必要
パケットキャプチャは時間軸に沿ってデータを分析するため、正確な時刻同期が重要です。PTP (Precision Time Protocol) やNTP (Network Time Protocol) などを使用して、ネットワーク機器とキャプチャツールの時刻を同期させてください。
- 記録媒体の空き容量に注意
パケットキャプチャファイルは非常に大きくなる可能性があります。記録媒体の空き容量に注意し、必要に応じて、記録媒体の追加や不要なキャプチャファイルの削除を行う必要があります。
これらの注意点を踏まえ、パケットキャプチャを安全かつ効果的に活用してください。
パケットキャプチャに使用されるツール例
eE-Neo
パケットキャプチャツールで、100%取りこぼしの無いパケットキャプチャとストレージ記録を保証したシステムです。マイクロバースト検知、高速パケットキャプチャ、高速ネットワークのトラブルシューティングなど幅広い業界で採用されています。
Protempis Thunderbolt™
高精度な時刻同期を実現するPTPグランドマスターです。5GやST2110に不可欠なナノ秒レベルの同期を提供します。みちびき対応で安定性と信頼性で、重要インフラを支えます。
Wireshark
ネットワーク上のパケットをキャプチャして解析するオープンソースのツールです。ネットワークのトラブルシューティングやセキュリティ分析、ネットワークの学習などに利用できます。
NVIDIA® Spectrum® SN2000
1/10/25/40/50/100GbEの速度で最高のパフォーマンスを提供します。仮想化と大規模な転送テーブルを包括的にサポートするSpectrum SN2000は、大規模なレイヤー2およびレイヤー3のデータセンター・ファブリックの構築に最適です。
代表的なパケットキャプチャの方法
- スイッチのミラーリング機能 (SPAN/ポートミラーリング) を利用
スイッチの特定のポートを流れるデータを、別のポートにコピーする機能を利用します。コピー先のポートにパケットキャプチャツールを接続することで、対象ポートのデータを取得できます。
- ソフトウェアによるパケットキャプチャ
Wiresharkなどのパケットキャプチャソフトウェアを、ネットワークに接続されたPCにインストールして使用します。PCのネットワークインターフェースを流れるデータを取得します。
パケットキャプチャ装置の今後の展開
- 高速化・大容量化への対応
ネットワークの高速化に伴い、200Gbps、400Gbps、800Gbpsといった高速回線に対応した製品が普及していくでしょう。クラウド環境やデータセンターなど、膨大なトラフィックを処理する必要がある場面では、より大容量のデータを収集・保存できる装置が求められます。
- AI・機械学習との連携
収集したパケットデータをAI・機械学習で解析することで、異常検知や脅威分析の精度向上が期待されます。過去のデータからパターンを学習し、未知の攻撃や潜在的な問題点を検出する機能が進化していくでしょう。
- クラウド環境への対応
クラウド環境でのネットワーク監視・分析ニーズの高まりから、クラウドネイティブなパケットキャプチャ装置が登場するでしょう。仮想環境やコンテナ環境に対応し、柔軟な拡張性や運用性を実現する製品が求められます。
- セキュリティ機能の強化
サイバー攻撃の高度化・巧妙化に対応するため、パケットキャプチャ装置にセキュリティ機能が統合されていくでしょう。リアルタイムでの脅威検知・遮断、不正アクセスの監視、マルウェア分析といった機能が強化されます。
- 専門知識がなくても扱いやすいインターフェースの開発
ネットワークエンジニアだけでなく、セキュリティ担当者や運用担当者など、幅広いユーザーが扱えるようなインターフェースが求められます。直感的な操作性、分かりやすい可視化機能、レポート作成機能などが充実していくでしょう。
- 低価格帯のパケットキャプチャ装置の登場
近年では、中小企業や個人利用を想定した低価格帯のパケットキャプチャ装置が登場しています。パケットキャプチャ装置の小型化やソフトウェアの機能向上によって今後より低価格で高性能なパケットキャプチャ装置が普及すると考えられます。
これらの展開により、パケットキャプチャ装置はネットワークの安全性と効率性を高める上で、ますます重要な役割を担っていくでしょう。