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企業情報
ご挨拶

Message from CEO 2018

代表取締役  床次 隆志

2017年末、3GPP(Third Generation Partnership Project)における5G(5th Generation:第5世代移動体通信方式)標準仕様初版策定の完了により、本年2018年は、Tier1ベンダーやオペレーターが5G商用開発を本格的に始動する年となることでしょう。第4世代の移動体通信サービスであるLTE(Long Term Evolution)は、わずか約100Mbpsというダウンリンクスピードで2009年にスタートしました。その後、LTEは文字通り長期にわたって進化を続け、2017年末時点では、3CC 256QAM により、ダウンリンク788 Mbpsのサービスを実現、さらに2020年の東京オリンピックをターゲットに始まる5Gサービスにおいては、LTE初期の50倍のとなる5GbpsのスループットをeMBB(enhanced MobileBroadband:進化型モバイルブロードバンド通信)として実現しようとしています。 5Gによる進化は、無線リンクのスループット向上にとどまりません。そのロードマップには、2020年のロールアウトに続いて計画されているURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:高信頼・超低遅延通信)やmMTC(massive Machine Type Communications:超大量接続)などの新機能の追加により、自動運転やIoT(Internet of Things)など、通信インフラ上で実現されようとしている新しいアプリケーションも強く意識した進化を遂げようとしています。2020 年までの残り2年、そして、その後の進化も含め、5Gは、私達のワイヤレスライフをさらなる高みに押し上げようとしています。

このような事業環境の中、2018年、アルチザは引き続き、以下を重点として、事業を展開してまいります。

1. LTE-A テスターの開発および国内・海外展開 アルチザのLTE-AテスターDuoSIM-Aは、ハイエンドの国内LTE-A基地局テスト市場においてデファクトスタンダードとなりました。また、欧州、中国といった海外市場においても、多セル、大量UEテストが可能な、非常に差別化された製品として、その存在感を確実に高めてきました。 移動体通信業界では現在、5Gの技術開発が注目を集めていますが、LTE-Aの機能追加もこれと並行して着実に進められています。CC(Carrier Component)追加によるさらなるCA(Carrier Aggregation)の多重化や、256QAMなどによるモジュレーションの高度化は、引き続きダウンリンクのスループット高速化に貢献し続けています。また、eMTC(enhanced Machine Type Communication)やNB-IoT(Narrow Band Internet of Things)など、セルラー直収のIoT技術仕様の策定も完了しています。 2018年、アルチザはDuoSIM-AをLTE-Aから5Gにマイグレーションさせるための、新しいプラットフォームとして「DuoSIM-A2」をリリースいたします。私たちはこれからもLTE-A上に追加される新しい機能をDuoSIM-A2でサポートしてまいります。

2. 5G テスター製品の開発 冒頭に記した通り、2018年は5G商用開発が本格化することでしょう。アルチザは、5Gテスター製品を「DuoSIM-5G」と命名。ハードウェア、FPGA、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、私たちの持てる力の全てを結集し、5Gテスター開発に注いでいます。 5Gでは、「NR(New Radio)」と呼ばれる無線技術仕様が大幅に強化されていますが、今回策定完了した5G初版標準仕様の幅広いパラメータ群に対応するため、アルチザのハードウェア開発チームは、強力な5Gベースバンドユニットを開発しました。また、上位レイヤやGUIの処理には、積極的にクラウド技術を導入することにより、ユーザビリティだけでなく、スケーラビリティを確保することで、ユーザーの投資を将来にわたって無駄にしない製品アーキテクチャを実現しました。 アルチザは5Gテスターにおいても、「アルチザらしい」と言われる差別化された製品開発に取り組み、海外市場でも一定の市場シェアを獲得できる製品へと育ててまいります。

3. パケットキャプチャーツールの開発 発売開始以来、国内パケットキャプチャー装置市場において着実にシェアを伸ばしてきたアルチザのetherExtractor。2017年末、国内大手移動体通信事業者が、全国のネットワーク拠点にパケットキャプチャー装置を配備するという大規模な設備導入に際し、弊社のetherExtractorを選定しました。開発販売開始以来、上位のソフトウェア開発は言うまでもなく、イーサネットパケットの入力部となるパケットキャプチャーカードからHDDへのRAID出力までを、一貫して自社で構築し続けてこなければ、国内通信事業者からの高い要求仕様をクリアすることはできなかったと確信しています。 2018年は、etherExtractorのハードウェア・ソフトウェアを含めたシステム全体のさらなる高度化を実現し、世界市場に同時発売できるフラッグシップモデルの開発・販売にも取り組む予定です。「ハードウェアからソフトウェアまでを一貫して自社開発する」という姿勢を貫きながら、さらにレベルの高い製品で世界市場に挑戦してまいります。

4. 開発リソースの拡充 アルチザでは、急激な開発プロジェクトの増加に伴い、開発エンジニアの本格的な大量採用を始めています。自社製品の開発がコアコンピータンスである私たちにとって、ハードウェア・ソフトウェア・技術サポート・マーケティングのエンジニアの確保と育成は企業としての生命線であると言えます。 2017年より岩手県滝沢市に建設しておりました「滝沢デベロップメントセンター(TDC)」は、地元の方々の温かいご支援をいただきまして、2018年2月に竣工する運びとなりました。このTDCはソフトウェア開発から始動する予定でしたが、近年、需要が急増しているFPGAの開発チームを同時並行で立ち上げる準備も進めております。TDC建屋には開発チームが使用する居室や会議室だけでなく、大規模な通信機器試験設備も設置し、移動体通信無線テスト拠点としても使用する予定です。また、近隣の大学とは、人材の供給・採用の関係だけでなく、当社と関連する技術をもつ研究室と産学共同プロジェクトも積極的に推進してまいります。

2018年、アルチザは、旧来とは一線を画した事業展開を加速してゆきます。既存規模で事業を展開するのではなく、事業戦略に対応した事業リソースを積極的に確保、拡大しながら、さらに上のレベルを目標に、成長発展してまいります。

1960年8月24日生まれ 兵庫県出身
東京理科大学理学部物理学科卒業
大手自動車部品メーカーでエンジニアとして勤務したのち、「これからは通信関連ビジネスの時代」と感じて、通信計測器メーカーに転職。1990年、自らのアイデアを形にするために、独立を決意。株式会社アルチザネットワークス(旧名エイブルコミュニケーション)を設立。